従来の平面に接触させて計測する測色計では測りにくい小部品や複雑形状部品の塗装を、基準塗板と比較して合否判定できるエリアスキャン測色システム「VECSS-KCW」を開発しました。
※写真:「VECSS-KCW」構成例:抜き取り簡易検査色評価システムとしてエリアスキャンカメラを配置(多角度分光測色計を基準規定用として利用)
●カメラ式測色システムとは 工業塗装の現場にある「塗装検査の課題」を解決すべく、エリアスキャン測色システム「VECSS-KCW」で部品と取り付け部の一体感を数値化し、塗装色の品質を保証するためのシステムです。
<塗装検査の課題>
1、塗装の高意匠化と測色機器の高機能化
塗装色の再現と品質管理については、近年意匠がさらに高度になりパールやメタリックといった輝きで素材を感じさせるタイプだけでなく、特に自動車用塗装においては深みを感じる赤や、陰影を感じさせるカラーデザインがなされています。一方で、設計通りに調色するプロセスは課題も多く、グローバルのサプライチェーンにおいて複雑な色を再現するのは困難な作業となっています。
また、最近では単なる色調だけでなく、高級感のあるメタリックやパール系の塗装も普及しているため、色彩に加え、メタリック塗料に含まれるアルミ粉やパール顔料の粒子の「輝度感」や「粒子感」も測定することが求められています。
そのためデーター量は莫大で複雑になり、過去の機器のようにプリンターで出力した表示を読み取って紙に記録するといった作業は非現実的になり、コンピューターによる処理が必須になっています。
2、測色機器と測定可能部位の限界
測色計はポータブル機器であっても測定にはある程度の面積と平面があることを前提としており、小部品や曲面がある部品では塗装面の測定が直接できないこともあります。
特に粒子撮影機能を有している機種では制約が大きく、小部品や曲面がある部品は測定不可能です。
ポータブル機器の中には、小口径や曲面に強みを持つものも存在するが、それでも弊社で塗装している部品の中には測定できないものがあります。その場合は、見本板やロット板の測定を行うことで、間接的に目視を介して塗装色の再現と品質管理を行うことになっています。
またデジカメやスマートフォンで目視評価の参考として、合わせ部を撮影することもあるが、カメラでは測色機器と違い再現性が乏しく、このまま品質保証に使うことはできません。
3、色の再現とあいまいな目視評価に対する保証
従来の色差計測による検査では、個々の計測ポイントを検査機器で計測した断片的な数値と、エリア全体を目視で判断したときの検査結果との間に不一致があり、色差検査結果に信頼性が低く、製品の良否判断において顧客(発注者)と生産者(受注者)とが共通の価値基準としにくいところがある。そのため目視評価を外すことはできません。
自動車会社が自らの工場で塗装する外装部品は、組み付けるボディと完全一体とみなされ違和感を持たれないように塗料や工法の面で配慮されています。一方付属部品においてはコスト重視のため外製とされるが、異なる工法、異なる素材、それらに対処したオリジナルの塗料で、外製受注先は意匠を再現することになります。
生産準備段階では何にどの程度あわせるのか、例えば基準となる塗装板との部分合致か、基準からずれた取付け部に取り付けて違和感がないようにするのかといった目標も様々で、塗装業者は顧客からの指示に振り回されます。
意匠の再現をどこまでするのか、色の再現と一言で言ってもその目視評価に基づく「さじ加減」は多様で、塗装業者を悩ませる要因です。完全再現を目指すにしても、工程や材料の制約上難しく部分的な再現に留めるにしても、どの程度であれば違和感を感じさせない色を塗装で再現できるかを、これからの部品塗装メーカーは今後さらに厳しく求められています。その生き残りのための手段にはあいまいな目視に対する厳密な品質管理手法が含まれ、精度を明示した量産品の品質保証メニュー(規格と抜き取り、全数検査、コストの明示など)も生き残りをかけて提示できるようにならなければなりません。
<エリアスキャン測色システム「VECSS-KCW」というソリューション>
本来は直接塗装部品に対しては、多角度分光測色計で測色をしなければいけませんが、代わりにエリアスキャンカメラを使い色を照合します。そこから目視評価を想定した部品と取り付け部の一体感を数値化することで、塗装色の品質を保証するシステムとなっています。
測定できる形状の部品やロット板や見本板などについては、別機器による多角度分光測色データーから、独自アルゴリズムによるマンセル色標に基づいた目視に近い評価値が算出され、高精度な色差判定が可能です。